2011年7月24日日曜日

惨憺たるマチュピチュ・ツアー  ***旅行代金、返せ!***

この項は、相当長いので興味ある人だけお読みください。

旅行会社を訴える

ちょうど1年前のこと、海外旅行の行く先人気ナンバー1のマチュピチュ・ツアーに参加した。しかも、個人ではなかなか予約が取れにくい上に、1泊の宿泊代が10万円ほどもすると聞いていた『サンクチュアリー・ロッジに泊まる』という、特別なツアーであった。

ペルーはトウモロコシでも有名。 特にジャイアントコーンはマチュピチュ近くだけで生産される。
世界で販売されているジャイアントコーンはすべてペルー産、と聞いた。
実際、帰国してからジャイアントコーンのいろいろな製品の産地を見たら、すべてペルー産と記されていた。
その夢のツアーに、とんでもないことが起こった。


これがあるから参加した、という「サンクチュアリー・ロッジに泊まる」というツアーの最大無比のポイントが、無情にも飛んでしまったのだ。

それというのも、添乗員の不手際で、経由地のアメリカで予定外の2泊をしてしまい、その結果、ペルー国内で6泊する予定が4泊になってしまった。4泊で6泊分の観光予定を全てこなすと言う無茶苦茶日程に変更された。。

サンクチュアリー・ロッジに泊まれなかったのは、ペルー入国が遅れたため、予定日にサンクチュアリー・ロッジに到着できなかったから。1年も前から予約が一杯になるというこのホテルだから、直前の宿泊日変更など出来るはずもない。

いったい何が起こったのか? 簡単に説明する。

ラン航空がサンフランシスコ・リマ間のフライトを就航させたのが2010年7月。1日が初便。僕たちの便は第2便の3日出発。この便に乗るべく、期待に胸膨らませて関空を出発。この乗り継ぎフライトを利用するツアーは、僕たちが初めてのはず。


予定より20分早くサンフランシスコ空港に着陸したが、ボーディングブリッジを使う順番待ちをしている間に、降機するのが定刻より大幅に遅れてしまった。結局、予定時刻より20分遅れて降機。

ツアーの予定表によると、サンフランシスコからペルーのリマ行きの飛行機が出るまでの乗り継ぎ時間は1時間54分しかない。降機待ちで、20分ロスしてしまっている上に、添乗員の緩慢な誘導。さらに、最悪なことに、乗り継ぎ便への待機依頼のミスで、リマ行き飛行機は、僕たちツアー客8人と添乗員の計9人を乗せずに飛び立ってしまった。

翌日にサンフランシスコからリマに行く飛行機はない。翌日にリマに行く便があるのはロスアンゼルスから。すぐに、サンフランシスコからロスアンゼルスに移動して翌日の便に乗れるようにすべきだったのだが、ツアー主催会社はサンフランシスコで1泊してから、翌日にロスアンゼルスに移動するスケジュールを選択。

この時点ではまだ、「サンクチュアリー・ロッジに泊まる」チャンスはあった。

ところが、あろう事か、翌日のサンフランシスコ発ロスアンゼルス行きの飛行機が機体故障のためフライトキャンセルとなり、代替便も手配できず、もう1泊サンフランシスコに泊まらされる事になってしまった。2日間をアメリカで無駄に過ごしてしまったのだ。これで、「サンクチュアリー・ロッジに泊まる」チャンスは消えてしまった。

2日遅れてペルーに入ったが、旅程は無茶苦茶。最悪だったのは、サンクチュアリー・ロッジに泊まれなかったことだが、そのほかにも、宿泊地変更、ホテル変更、観光予定地キャンセル、観光予定時間短縮、などなど、山ほどの旅行契約違反。

生命保険証書と同じように、ツアーに参加する時にも、読むのに頭が痛くなるような
説明書が付いてくる。 ツアー客は自動的にこの内容に同意することとなっている。
内容の良否は別にして・・・・・

ペルー国内のホテルも、下のように唖然とする内容。
1泊目 睡眠時間ゼロ。(ホテル滞在時間1時間45分)
2泊目 予定外のランク下のホテル。
3泊目 強行日程で高山病にかかってしまった上、睡眠時間6時間。
4泊目 睡眠時間3時間(ホテル滞在時間6時間足らず)

ここでのホテル滞在時間と言うのは、ホテルの玄関を入ってから出るまでの時間を指す。 
眠れなかったわけではない。物理的に、これだけの時間しかなかったのだ。

ツアー代金を返せ! と、団体交渉

帰国後、ツアー客8人はどうにも我慢できず、ツアー主催会社に旅行代金の全額返金・慰謝料などを求めて、団体交渉。数回の話し合いが行われたが、会社は非を認めようとしない。

この間、旅行トラブルの相談窓口である日本旅行業協会(JATA)に相談に行ったり、ツアー参加者がそれぞれ住んでいる自治体の消費生活センターに行って、弁護士と相談したりした。知人の海外専門の旅行会社社長に相談したりもした。

○全額返金は当然だが、さらに慰謝料なども請求できる、
○旅行約款は、勝手に旅行会社が決めたもので、それに拘束されることはない、という弁護士の意見があったり、
○一部返金を旅行会社に請求できるが旅行約款の範囲内、という全く旅行会社を代弁するだけのJATAの回答があったり、
○調停や裁判に訴えてみたら、という意見などさまざま。

裁判所に調停申し立て

結局、ツアー参加者の各種事情で、8人のうちの6人だけが共同で、裁判所に調停の申請をすることにした。旅行トラブルがあってから5ヶ月経った、2010年12月7日の事だ。

調停に要する費用は大してかからない。損害賠償などとして、1人当たり500,000円の請求を申し立てた僕たちの場合は、手数料と各種書類の郵送料合わせて1人当たり2,000円余り。

請求額の根拠は次の通り。(ツアー参加者により、額は若干異なる)

基本旅費                     429,000円
燃油サーチャージ             50,500円
その他                                  11,650円
海外旅行保険                        6,580円
                              計497,730円
                まるめて500,000円

裁判所なぞ、トンと縁のない6人がドキドキしながら第1回の調停の場に集まったのが、ツアートラブルのあった年を越して、2011年1月27日。

学識経験者というんだろうか、各種知識・経験豊富な人の中から選ばれた調停委員2人が、僕たち6人の申立人と相手方・旅行会社の意見を交互に聞く。相手は会社だから、代理人の弁護士が出てくる。ただし、相手の弁護士と『ど素人』の僕たちが、“丁々発止の交渉”をする、なんてことはない。

双方の主張の対立は如何ともし難く、合意は次回調停に持ち越されることになった。

第2回調停日は2011年3月11日。ちょうど、調停の話し合い中に裁判所の建物が大きく揺れた、東北大震災の当日だった。話し合いの合意点は見つからず、さらに次の調停日を設定してもらうことに。

第3回調停日、2011年5月26日。トラブルがあったのは前年の7月初旬だったから、1年近くになる。最初は、こちらの要求が通らないときは、本裁判をしてでも、と全員意気さかんだったのだが、さすがに1年の長丁場になるとしんどくなってくる。

調停を申し立てた6人の中にも、もういい加減のところで手を打とう、という意見が大勢を占めるようになってきた。僕たちツアー参加者と旅行社の双方から妥協案・額が出てくる。最後のスリ合わせを調停委員が行ってくれ、合意成立。裁判官立会いの下に調停調書を作成。

調停は、成立しなければ、途中に話し合った内容などにも全く拘束されない。しかし、いったん調停が成立すると、その内容に、双方が法的に拘束され、実行しなければならない。

1年近くかかって、やっと調停成立

合意に達した額は200,000円。旅行社はツアー客それぞれにこの額を支払うと言うことだ。

請求額の500,000円に対し、達成率40%。

もっとも旅行社の僕たちへの説明では、現地でのフライト変更に要した費用115,000円(旅行社が現地で支払い済み)はツアー客が負担すべき費用であるので、この額もプラスすると、315,000円支払うことになる、と言う主張があった。

添乗員のミスでひどい旅行になったのは明らかで、そのミスで旅程が変更になり、そのために要したフライト変更費用115,000円は当然旅行社が支払うべきものであり、今回の賠償額に含めてはならないと僕たちは主張したが、この点の見解の当否は棚上げにしたままの決着となった。

余談

旅行から帰って、このトラブルをどのように旅行社にクレームとして申し入れるか色々考えた。周りの友人、旅行トラブル相談機関、消費者センターなどへの相談はもちろんだ。

旅行社の担当責任者など、「自分の長い旅行業務・営業の中で、こんなひどいツアートラブルは初めての経験です」と自ら白状した。それでも会社としては、ツアー客に全額返金すると言う判断は営業上くだせない。今後の“悪しき”前例になるのを恐れたのだろう。

旅行約款だけを見れば、「旅行の変更補償金は旅行代金の15%以上は支払いません」と書いてある。上にも書いたが、この旅行約款は「旅行社が勝手に規則を作ってツアー参加者に押し付けているもので、公序良俗に反する疑いもある」と言う弁護士もいた。

マスコミにも、意見を求めたかったが、あまりやると「クレーマー」のレッテルを貼られかねないので、自重。新聞社1社にだけは、相談のメールを出した。

ただ最近の新聞を見ていると、旅行会社の全面広告がなんと多いことか。化粧品や健康食品の広告も多いが、派手で大きくて多いのは旅行広告。新聞社に相談しても、消費者サイドに立った動き、すなわち紙面上で問題提起することなど、できるわけがない。新聞社としては、この広告不況の中で大々的に広告を出してくれる旅行社は、ときの“神様”のようなものだ。そんな“神様”の神経を逆なでするような記事は書けない、と言うわけだ。

若い女性記者が「一度話を聞きたい」と、面会の申し込みがあり、僕が新聞社まで出向きツアーのトラブルを話したが、『突然の会議予定が入ってしまった』との理由で面会予定時間を短縮して終了。新聞社・担当者の姿勢がミエミエ。

この夏の旅行シーズンが終わったところで、ツアーでトラブルにあう人がわんさか出てくるのではないかと思う。旅行社と戦うのはなかなかエネルギーが必要で、たいていの人は『涙金』だけで泣き寝入りさせられてしまうのがほとんど、と関係者から聴いた。

さて、トラブルに遭わないようにするにはどうしたらよいだろうか? 遭ってしまったらどうしたらよい?

ストライキによる飛行機欠航で賠償金交渉
アムステルダム・スキポール空港での出来事

過去にこんなことも経験しているので、興味がある方はこちらをご覧ください。僕のホームページです。

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